2018年現在、国産の直列6気筒エンジンというのは新車に載っていません。
新型スープラが直6の復活等と騒がれていましたのはそういうことです。
直6エンジンはなぜ消えた?
3気筒がV型に並んで合計6気筒となっているV6エンジンに比べ、
直列に6気筒が並んでいる直列6気筒エンジンは当然ながら長い形になります。
すると、ボディも長くならざるを得ません。
現代は衝突安全性能を非常に重要視しておりますから、
大きくスペースをとる直6エンジンを積むためには、
大きな広いエンジンルームが要ります。
その分車の全長が大きくなってしまうと、当然コストは高くなり、
その上今時なら大型で不便な車という扱いを受けてしまうでしょう。
それならば大型で不便でもOK、趣味の車として売ってしまえばいいかもしれませんが、
ご存知の通り、スポーツカー等は冬の時代(最近ちょっと明けつつある?)です。
売れなくては採算がとれません。
かとって、これまでと同じ車体サイズに収めようとすれば、
エンジンルームが広くなった分だけ全長を短くしないといけません。
そしたら人が乗る、居住空間が狭くなってしまいます。
さらに、FF車の場合エンジンを横置きしますが、
長い直6を横にするには色々と無理があります。
そういうわけで直6エンジンは衰退していったのです。
直列6気筒は何がスゴイ?
直6エンジンは理論上振動がお互いに打ち消し合い、
0になっているという理想的なエンジンなのです。
詳細図と詳しい解説がこちらのサイト(完全バランスの意味)に記載されております。
国産の直6エンジンといえば、
トヨタと日産しか生産しておりませんでした。
たとえばスープラの2JZエンジン、
R32スカイラインのRB26エンジンがそうです。
スカイラインGT-RといえばRB26DETT… かもしれません。
しかし、GT-Rといえば、KPGC10の"ハコスカ"GT-Rが原点であり、
そのKPGC10に搭載されていたのがS20エンジンというエンジンだったのです。
S20エンジンとは
第3回日本グランプリにて優勝を果たしたプリンスのR380というレーシングカーがあります。
昔、NHKのプロジェクトXにもその開発エピソードが取り上げられておりました。
↑普通に見れるけど大丈夫なんでしょうか?
この車がR380であり、搭載されるエンジンは、
GR8エンジン。直6 DOHC 最高出力は197馬力です。
そしてこのエンジンをベースに、公道仕様に開発されたのがS20エンジンなのです。
かなり良い音ですね…
2.0Lの直6エンジンで、最高出力は160馬力です。
ステンレスの等長エキゾーストマニフォールドを標準装備した当時としてはもちろん、
元がレーシングエンジンですから最強のエンジンです。
このエンジンを搭載したハコスカGT-Rがレース50勝という記録を打ち立てました。
それはS20エンジンあっての偉業だったことは間違いないでしょう。
S20エンジンを搭載する車
このS20エンジンは、R380…つまりプリンスの流れを汲む生まれです。
そしてスカイラインも元はプリンスですから、
だからこそハコスカGT-RにS20エンジンが搭載されたのだろうと、勝手に思っておりましたが、
S30フェアレディZの「432」というグレードに搭載されていたのでした。
このZ432の方が200kg程度、ハコスカことKPGC10よりも軽いので、
スペックだけ見たらZのほうが速いのでは?と思いますが、
やはりもともと専用設計で搭載されたハコスカに比べて、
むりやり搭載されているシロモノのようです。
レースにおいて、軽量なZ432が本当に優れていたら50勝とっていたのはGT-Rでは無かったでしょうし、
やはり総合的にはハコスカGT-Rに軍配があがっていたのでしょう。
いまや普通に買うことができなくなった直6エンジンというだけでなく、
レーシングカーのエンジンをベースしたというS20エンジンは何ともロマンにあふれる憧れる存在ですね。
もうこれから先の時代、そんなエンジンを搭載した市販車は登場しないだろうと思うと寂しいですが、
そういうことも相まってS20エンジンはもっと伝説になって行くのでしょう。
2019/5 追記
トヨタ博物館に行ってきましたところ、
Z432が展示されておりました。
残念ながらS20エンジンは拝見できず。
Z432の特徴の一つである、縦並びのデュアルマフラーも後ろに回り込めないようになっており、
真後ろから見られず、腕を伸ばしてカメラだけで写真を撮ることでしか確認できませんでした。